
借地権と地上権は、どちらも他人の土地を利用する権利ですが、その内容には大きな違いがあります。
この記事では、「借地権」と「地上権」という2つの権利をわかりやすく比較し、あなたの土地活用に役立つ情報をお届けします。

将来、実家の土地に家を建てたいけど、借地権ってよくわからない。

大丈夫です、借地権は建物を所有するために土地を借りる権利のこと、一緒に理解を深めていきましょう。
この記事では以下のコンテンツを掲載しています。
- 借地権と地上権の定義
- 2つの権利の比較
- 土地活用の目的別「選び方」
借地権と地上権の違いを比較

借地権と地上権は、どちらも他人の土地を利用する権利ですが、その内容には大きな違いがあります。
ご自身の状況に合わせて、どちらの権利が適しているかを判断することが大切です。
借地権の定義
借地権とは、建物の所有を目的として、他人の土地を借りて使用する権利のことです。
具体的には、借地借家法という法律で定められており、建物を建てる目的で土地を借りる場合にのみ適用される決まりです。
例えば、マイホームを建てるために土地を借りる場合や、アパート経営のために土地を借りる場合などです。
2023年には、全国で約100万件弱の借地権設定がありました。
借地権には、普通借地権と定期借地権の2種類があり、契約期間や更新の有無などが異なります。
借地権の契約期間や更新については、確認が重要です。
地上権の定義
地上権とは、工作物や竹木を所有するために、他人の土地を使用する権利のことです。
工作物とは、建物だけでなく、トンネルや電柱、ガス管、高架道路などのことです。
また、竹木とは、樹木や竹林などを指します。
2024年現在、高速道路の建設など、大規模なプロジェクトでは地上権が多く活用されています。

地上権って、建物を建てる以外にも使えるの?

そうなんです、地上権は、建物以外にも、トンネルや電柱など、様々なものを所有するために土地を利用できる権利です。
地上権は、借地権とは異なり、建物の所有を目的としなくても設定できます。
そのため、土地の利用範囲が広く、より強い権利と言えます。
借地権と地上権の比較表
借地権と地上権の違いを表にまとめました。
比較項目 | 借地権 | 地上権 |
---|---|---|
目的 | 建物の所有 | 工作物または竹木の所有 |
権利の性質 | 弱い(債権) | 強い(物権) |
契約期間 | 借地借家法による制限あり(例:普通借地権は30年以上) | 原則として制限なし(当事者間の合意で自由に設定可能) |
更新 | 普通借地権の場合は更新可能 | 契約期間満了時に更新する場合としない場合がある(契約内容による) |
譲渡・転貸 | 地主の承諾が必要 | 原則として自由 |
登記 | 建物について登記すれば、借地権を第三者に対抗できる(借地借家法第10条) | 登記しなければ第三者に対抗できない |
土地固定資産税評価額 | 土地固定資産税評価額が低いケースがある | 土地固定資産税評価額が高いケースがある |
メリット | 地上権に比べて土地の固定資産税・都市計画税が安くなる可能性がある | 土地の利用制限が少なく、自由に利用できる。権利が強く、安定して土地を利用できる |
デメリット | 地上権に比べて権利が弱く、地主の意向に左右されやすい。契約期間に制限がある | 借地権に比べて土地の固定資産税・都市計画税が高くなる可能性がある |
取得しやすいか | 借地権設定者が個人の場合が多く、比較的取得しやすい | 大規模な開発や公共事業で利用されることが多く、個人が取得するケースは比較的少ない |
借地権と地上権は、どちらも土地を利用する権利ですが、利用目的や権利の強さに大きな違いがあります。
どちらの権利が適しているかは、土地の利用目的や状況によって異なりますので、慎重に検討しましょう。
借地権と地上権のどちらを選ぶべきか

借地権と地上権、どちらの権利を選ぶべきか悩む方もいるかもしれません。
どちらの権利もメリット・デメリットがあるため、ご自身の状況に合わせて慎重に検討することが大切です。
土地活用の目的で選ぶ
土地活用の目的によって、選ぶべき権利は異なります。
土地活用がどちらの目的に合うか確認しましょう。

不動産投資は借地権と地上権のどちらでするべきか迷うよね。

確かに、どちらの権利で不動産投資をするべきか、悩ましいですよね。
そこで、以下のように整理するとわかりやすいですよ。
土地活用の目的 | 選ぶべき権利 | 理由 |
---|---|---|
建物を所有して、賃貸経営や自己利用をしたい | 借地権 | 借地権は建物の所有を目的とするため |
太陽光パネルや地下トンネルなどを設置したい | 地上権 | 地上権は工作物(建物以外)や竹木の所有を目的とするため |
土地を長期間安定して利用したい | 地上権 | 地上権は借地権よりも権利が強く、契約期間の制限が原則としてないため |
初期費用を抑えたい | 借地権 | 借地権は地上権に比べて、権利金(保証金)が安い場合があるため |
土地を自由に利用・処分したい | 地上権 | 地上権は借地権よりも土地の利用制限が少なく、地主の承諾なく譲渡・転貸が可能なため |
将来的に土地の購入を検討している | 借地権 | 借地権には、借地権者が土地所有者に対して建物を買い取るよう請求できる「建物買取請求権」がある場合があるため(契約内容による) |
例えば、アパート経営ならば、建物の所有を目的とする借地権が適しています。
一方、太陽光発電事業を行いたいのであれば、工作物の所有を目的とする地上権を選ぶことになります。
契約内容で選ぶ
借地権と地上権は、契約内容も大きく異なります。
将来的なトラブルを避けるためにも、契約内容をしっかりと確認しましょう。

契約期間や更新料など、契約内容の確認が大変ですね。

契約内容を細かくチェックするのは骨が折れますが、後々のトラブルを防ぐために重要です。
ポイント | 借地権 | 地上権 |
---|---|---|
契約期間 | 借地借家法で定められた期間(普通借地権は30年以上) | 当事者間で自由に設定可能 |
更新の有無 | 普通借地権は更新可能、定期借地権は更新不可 | 契約内容による |
更新料 | 必要(金額は当事者間の合意による) | 不要な場合が多い(契約内容による) |
譲渡・転貸の承諾 | 地主の承諾が必要 | 原則として不要 |
中途解約 | 原則として不可(正当事由が必要) | 契約内容による(違約金が発生する場合あり) |
登記 | 建物登記で対抗可能 | 登記が必要 |
契約形態 | 契約書を作成 | 公正証書が望ましい(登記のため) |
準拠法 | 借地借家法 | 民法、借地借家法(建物の所有を目的とする場合) |
紛争解決 | 裁判所の調停・訴訟 | 裁判所の調停・訴訟、弁護士による交渉、ADR(裁判外紛争解決手続)など |
例えば、借地権の契約期間は借地借家法で定められており、普通借地権の場合は30年以上です。
一方、地上権の契約期間は当事者間で自由に設定できます。
契約内容を比較検討し、ご自身の状況に合った権利を選びましょう。
専門家の意見を聞く
借地権と地上権のどちらを選ぶべきか、最終的な判断は専門家の意見を聞くことをおすすめします。
専門家は、法的な観点からだけではなく、あなたの状況に合わせて総合的に判断してくれます。

専門家といわれても、どこに相談すればいいのかわからないんだよね。

確かに、前提知識なしで選ぶのは難しいですね。
そこで、ざっくりと整理してみました。
専門家 | 相談内容 | 費用(目安) |
---|---|---|
弁護士 | 法律相談、契約書の作成・チェック、紛争解決 | 相談料:30分5,000円~、着手金:事案による |
司法書士 | 登記手続き、契約書の作成支援 | 登記費用:数万円~、相談料:無料または30分5,000円~ |
不動産鑑定士 | 土地・建物の評価、適正な賃料の算定 | 鑑定評価:数十万円~、相談料:無料または30分5,000円~ |
税理士 | 借地権・地上権に関する税務相談(相続税、贈与税、譲渡所得税など) | 相談料:30分5,000円~、税務申告:事案による |
土地家屋調査士 | 土地の測量、境界確定 | 測量費用:数十万円~ |
不動産コンサルタント | 不動産投資、土地活用に関する相談 | 相談料:1時間10,000円~、コンサルティング料:事案による |
例えば、借地権の契約を検討している場合は弁護士に相談することで、契約内容のチェックや将来的な紛争リスクの低減につながります。
不動産鑑定士は、土地の適正価格を評価し、税理士は借地権や地上権に関する税務相談に乗ってくれます。
ご自身の状況に応じて、適切な専門家を選びましょう。
借地権付きの不動産投資を検討中の場合は?

借地権付きの不動産投資は、初期費用を抑えつつ、収益を得られる可能性がある一方で、通常の不動産投資とは異なる注意点も存在します。
専門家に相談した方が安心なのですが、事前準備も重要です。
また、不動産投資にはリスクもつきものですので、その点を踏まえて対策を講じておきましょう。
専門家に相談するメリット
借地権付き不動産投資は、通常の不動産投資に比べて、契約内容や法律関係が複雑になる場合があります。
専門家へ相談すると、以下のようなメリットがあります。
メリット | 内容 |
---|---|
複雑な契約内容の理解 | 借地契約の内容や関連法規をわかりやすく説明してもらい、不明点を解消できる |
リスクの把握と対策 | 借地権特有のリスクを把握し、具体的な対策をアドバイスしてもらえる |
適切な物件選び | 投資目的に合った物件選びをサポートしてもらえる |
地主との交渉サポート | 借地条件の交渉や契約締結を有利に進めるためのサポートを受けられる |
税務・法務上のアドバイス | 借地権に関する税務や法務上の注意点について、専門的なアドバイスを受けられる |
トラブル発生時の対応 | 万が一トラブルが発生した場合、専門家の知識と経験に基づいた適切な対応を期待できる |
時間と労力の節約 | 専門家に任せることで、物件探しや契約手続きにかかる時間や労力を節約できる |
精神的な安心感 | 専門家によるサポートを受けることで、安心して不動産投資に取り組める |
最新情報の入手 | 不動産市場や法改正に関する最新情報を入手し、より適切な投資判断を行える |
セカンドオピニオン | 複数の専門家の意見を聞くことで、より客観的な視点から投資判断を行える |
専門家への相談は、不動産投資を成功させるための近道です。
疑問や不安を解消し、納得のいく投資判断を行いましょう。
相談前に準備すべきこと
専門家への相談をより実りあるものにするためには、事前の準備が大切です。
事前に準備すべきことは以下の3つです。
準備すべきこと | 具体的な内容 |
---|---|
投資目的の明確化 | 借地権付き不動産への投資で何を実現したいのか具体的にする(例: キャピタルゲイン、インカムゲイン、節税対策) |
自己資金の把握 | 不動産投資に充てられる自己資金の額を正確に把握する |
情報収集と疑問点の整理 | 借地権や不動産投資に関する基本的な情報を収集し、疑問点を整理する |
例えば、投資目的を明確化する場合、「老後の安定収入を得たい」「5年後に売却して利益を得たい」というように具体的にします。
次に、自己資金ですが、住宅ローンの借り入れを検討している場合は、金融機関の事前審査を受けておくと、より正確な金額を把握できます。
最後に、借地権の更新料や地代の相場、借地権付き建物の売却事例などを調べておくと、専門家との相談がスムーズに進みます。

自己資金だけで足りるかも不安だね…

金融機関の融資を利用することも可能です。検討してみる価値アリですよ。
たとえばみずほ信託銀行やスルガ銀行では、地主の承諾書取得を条件として、建物のみを対象としたローンを組むことができます。ノンバンク系のセゾンファンデックスなどを利用する方法もあります。
賃貸マンション・アパートローン「プロデュース II」|みずほ信託銀行
投資用不動産ローン|スルガ銀行
いずれにせよ、借地権付き物件への融資を検討する際は、地主の承諾書の取得や物件の築年数など、各金融機関の条件を事前に確認することがカギとなります。
不動産投資のリスクと対策
不動産投資には、様々なリスクが存在します。
ここでは、主なリスクとその対策を3つのテーブルにまとめました。
リスクの種類 | 内容 |
---|---|
空室リスク | 入居者が決まらず、家賃収入が得られない |
価格変動リスク | 不動産価格が下落し、売却時に損失が発生する |
金利変動リスク | 金利が上昇し、ローンの返済負担が増加する |
空室リスクの対策 | 具体的な内容 |
---|---|
立地条件の良い物件を選ぶ | 駅近、商業施設が近いなど、需要の高いエリアの物件を選ぶ |
適切な賃料設定 | 周辺相場を調査し、競争力のある賃料を設定する |
リフォーム・リノベーション | 築年数が経過している場合は、リフォームやリノベーションで物件の魅力を向上させる |
価格変動リスク対策 | 具体的な内容 |
---|---|
長期的な視点で投資する | 短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資する |
情報収集を継続する | 不動産市場の動向や経済状況に関する情報収集を継続する |
複数の不動産に分散投資する | 1つの不動産に集中投資するのではなく、複数の不動産に分散投資することで、リスクを軽減する |

金利が上がったらどうしよう…

金利上昇リスクに備えて、固定金利型ローンを選択したり、繰り上げ返済を検討したりすることも可能です。
これらの対策は、リスクを完全に排除することはできませんが、リスクを軽減し、不動産投資を成功に導く可能性を高めます。
まとめ

この記事では、借地権と地上権の違いについて解説しました。
- 借地権は建物を建てるために土地を借りる権利、地上権は建物以外のものも所有するために土地を利用できる権利
- 土地活用の目的や契約内容によってどちらが適しているかが異なる
- 専門家(弁護士、司法書士、不動産鑑定士など)に相談すると、ご自身の状況に合ったアドバイスを受けることができる
借地権と地上権は、どちらも土地を利用する権利ですが、様々な違いがあります。
ご自身の状況に合わせて専門家を活用して、最適な選択をしましょう。