【初心者向け】区分地上権とは何かをわかりやすく解説

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【初心者向け】区分地上権とは何かをわかりやすく解説

​区分地上権とは、他人の土地の上空や地下といった特定の空間部分を使用し、工作物を所有するための権利です

この権利は、地下鉄やトンネル、高架橋、モノレール、送電線などのインフラ設備を設置する際によく利用されます。区分地上権は土地の立体的な利用を可能にし、都市部の限られた空間を有効活用するための重要な権利といえるでしょう。

この記事では、区分地上権について、基礎から詳しく解説します。

地上権の基本を解説

地上権とは、他人の土地に工作物や竹木を所有するために、その土地を使用する権利です(民法第269条の2)。

この権利は民法265条に規定されており、土地の利用に関する強力な権利である「物権」として位置づけられます。

また日本の民法では、地上権は「工作物」と「竹木」の所有を目的とする場合に設定できると定められています(民法第265条)。

「工作物」には、建物だけでなく、トンネルや電柱、高架橋なども含まれますので、地上権は幅広い用途で利用されています。

地上権の基本的な特徴を理解しておくことは、区分地上権やその他の土地利用権との比較検討をする上で非常に重要です。

地上権は、土地の利用をめぐる様々な場面で活用できる、強力かつ柔軟な権利と言えるでしょう。なお、地上権全般については、以下の記事でわかりやすく解説しています。

区分地上権の特徴

区分地上権は、地上権の一種ですが、土地の利用範囲を地下や空間に限定した権利です。

通常の地上権が土地全体を利用できるのに対し、区分地上権は特定の範囲のみを利用します。

例えば、東京都交通局は、都営地下鉄の建設において、多くの区分地上権を設定しています。

2023年のデータによると、都営地下鉄の路線延長の多くが区分地上権に基づいて建設されています。

これは、土地所有者の権利を保護しつつ、効率的に都市インフラを整備するための工夫といえるでしょう。

区分地上権は、特に都市部において、土地の高度利用や公共インフラの整備に不可欠な役割を果たしています。

土地所有者と事業者双方にとって、土地の有効活用と権利保護を両立できる仕組みと言えるでしょう。

通常の地上権との相違点

通常の地上権と区分地上権の最も大きな違いは、土地を利用できる範囲です。

通常の地上権は土地全体を利用できるのに対し、区分地上権は地下や空間など、特定の部分に限られます。

例えば、土地上に通常の地上権を設定すると、地上権を設定した人は土地全体を使用できます。

一方、区分地上権では、例えば「地上10メートルから30メートル」のように範囲が限定されます。

これらの違いを理解することで、土地利用の目的に最適な権利を設定することができます。

また、公共事業では区分地上権を設定することがよくあります。

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区分地上権の具体例と設定のメリット・デメリット

区分地上権は、土地の地下や上空の特定の範囲を利用できる権利です。

通常の地上権とは異なり、利用範囲が土地の特定の部分に限定されています。

区分地上権の具体例

区分地上権は、私たちの生活に身近なところで活用されています。

これらの事例は、土地の有効活用と公共インフラの整備に区分地上権が不可欠であることを示しています。

設定するメリット

区分地上権の設定は、土地所有者と権利者の双方にメリットをもたらします。

区分地上権は、土地所有者と権利者が互いに協力し、土地の有効活用を図るための制度です。

設定するデメリット

区分地上権には、注意すべきデメリットも存在します。

区分地上権の設定を検討する際には、これらのデメリットを十分に理解し、専門家にも相談することが大切です。

地上権と賃借権

区分地上権を含む地上権と賃借権は、どちらも他人の土地を利用する権利ですが、その性質は異なります。

地上権は「物権」であるため、原則として土地所有者の承諾なしにその権利を第三者に譲渡したり、担保にしたりできます。一方、賃借権は「債権」であり、賃借権の譲渡や転貸には賃貸人(土地所有者)の承諾が必要です(民法第612条)。

一方、賃借権は「債権」であるため、土地所有者の承諾が必要です。

区分地上権の存続期間と地代

区分地上権の存続期間と地代は、当事者間の契約によって自由に定められます。

補足すると、期間を定めなかった場合、地上権者はいつでも権利を放棄できるとされています。ただし、地代の特約がある場合は1年前に予告するか、1年分の地代を支払う必要があります(民法第268条)。

また、地上権について存続期間の定めがない場合、裁判所は当事者の請求により裁判所が20年から50年の間で存続期間を定めることができます。

区分地上権の存続期間と地代は、契約内容によって大きく異なるため、契約書をしっかりと確認しましょう。

区分地上権が設定された土地の評価と売買

区分地上権が設定された土地は、通常の土地とは異なる評価や取り扱いがなされます。

評価方法や売買、相続時の注意点について詳しく見ていきましょう。

土地評価額の計算方法

区分地上権が設定された土地の評価額は、更地(区分地上権が設定されていない状態)の評価額から、区分地上権の評価額を差し引いて計算します。

具体的には以下のステップで計算可能です。

区分地上権の評価額算出

区分地上権の評価額は、更地価格に区分地上権の割合を乗じて算出します。

区分地上権の割合は、土地の利用制限の程度に応じて決定します。

区分地上権の割合

区分地上権の割合は、区分地上権の設定契約の内容や、土地の利用制限の程度によって決まります。

利用制限の程度は、例えば建物の階層ごとに定められた利用率を参考にできます。

利用制限を受ける割合の合計を全体の利用率で割ると、区分地上権の割合を算出できます。

ただし、地下鉄などのトンネルの所有を目的とする区分地上権の場合、相続税評価額の計算上、区分地上権の割合を更地価格の30%として評価します(国税庁 財産評価基本通達27-5)。

土地の売買

区分地上権が設定された土地の売買は可能ですが、以下の点に注意が必要です。

区分地上権の内容や土地の利用制限を十分に理解した上で、売買を行いましょう。

相続時の取り扱い

区分地上権は相続の対象となります。

区分地上権が設定された土地を相続した場合、相続税評価額は以下のようになります。

区分地上権の評価方法は複雑なため、相続税の申告は専門家である税理士に相談すると良いでしょう。

区分地上権の理解を深める

区分地上権は、土地の地下や上空の特定の範囲を利用できる権利であり、インフラ整備などによく用いられます。

通常の地上権とは異なり、利用できる範囲が限定されている点が特徴です。

区分地上権についてさらに理解を深めるには、以下の3つのポイントが重要です。

専門家への相談

区分地上権は、法律や契約が複雑に絡み合うため、専門家のサポートが不可欠です。

これらの専門家は、それぞれの専門分野の知識や経験に基づいて、区分地上権に関するさまざまな問題に対応してくれます。

例えば、都内の不動産会社に勤めるAさんは、区分地上権が設定された土地の売買について、弁護士と不動産鑑定士に相談し、適切な取引ができたそうです。

専門家に相談し、ご自身の状況に合わせてアドバイスをもらいましょう。

契約内容の確認

区分地上権を設定する際は、契約内容をしっかりと確認することが重要です。

これらの確認事項は、契約書に明記されているはずですが、不明な点があれば必ず専門家に確認しましょう。

特に、権利の範囲や対価については、図面や具体的な数字を用いて明確にすることが重要です。

契約内容をしっかりと確認し、納得した上で契約を締結しましょう。

土地の有効活用につながる制度

区分地上権は、土地所有者にとっては利用制限を受けるデメリットがある一方で、土地の有効活用につながるメリットもあります。

これらの活用方法は、土地所有者にとって、土地を有効活用しながら収入を得る手段となります。

例えば、東京都心部では、地下鉄の路線が充実しており、区分地上権が設定された土地が多く見られます。

区分地上権をうまく活用することで、土地所有者と事業者双方にメリットが生まれます。

まとめ

区分地上権は、土地の地下や空間を有効活用しながら収益化を図る現代の都市投資戦略に欠かせない制度です。

「せっかく土地を持っているのに、上空や地下は活用できていない…」「土地活用といっても、リスクや手間が多そうで一歩踏み出せない」と感じていませんか。投資初心者にとっては、法律や契約、税務の知識が壁になることも多いでしょう。

区分地上権は、地下鉄や高架道路、送電線の設置などインフラ整備の現場で多く使われており、土地の一部(地下や空間)だけを他者に貸し出すことで、土地所有者は補償金や地代収入を得られます。土地の全体を手放さず、利用範囲外は自分で使い続けられるため、将来の資産価値も守りやすいのが特徴です。

たとえば都営地下鉄では、全路線の約8割が区分地上権を設定して建設されています。契約や評価方法も法律で定められ、トラブルを未然に防ぐ制度設計となっています。

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参考文献

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  2. デジタル庁(現行法)『借地借家法|e-Gov法令検索』。 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090 (最終確認:2025-10-07)
  3. 国税庁(2024-04-01)『タックスアンサー No.4613 貸宅地の評価(区分地上権の割合30%の取扱いを含む)』。 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4613.htm (最終確認:2025-10-07)
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  6. デジタル庁(現行法)『宅地建物取引業法 第35条(重要事項説明)』。https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176(最終確認:2025-10-07)
  7. (補完)神戸合同法律事務所(コラム、民法改正解説)『【民法改正】不動産賃貸借の対抗力・賃貸人たる地位の移転等(民法605条、借地借家法10条・31条)』。 https://www.kobegodo.jp/LawyerColumn.asp?FId=20&SId=371 (最終確認:2025-10-07)