
マンションなど区分所有建物の敷地には地上権敷地権という重要な権利関係があります。
特に、地上権が建物の専有部分の所有権と一体化して敷地権として登記されることで、土地の権利が分離して処分されることが防がれ、権利関係が明確になる仕組みなのですね。
この記事では、この地上権敷地権について、その定義や役割を初心者の方にもわかりやすく解説いたします。
この記事を読むことで、不動産取引や土地の権利に関する専門用語への理解が深まり、マンションの購入や所有に関わる不安を解消し、安心して大切な資産と向き合えるようになります。
地上権敷地権だけでなく、似ている借地権や土地所有権との違い、そして実際に登記簿でどのように確認できるのか、購入時にどのような注意点があるのかといった点も詳しく解説しています。
複雑に感じられる不動産登記や区分所有法の知識も、具体的な事例を交えながら説明を進めていきます。
この記事でわかること
- 地上権や敷地権とは何か、両者が一体となる意味
- マンションにおける地上権敷地権の役割とメリット
- 借地権や所有権など、他の土地の権利との違い
- 敷地権を登記簿で確認する方法と注意点
マンション購入前に知っておきたい地上権敷地権

マンション購入は人生で大きなお買いものですね。
不動産に関する権利は少し難しく感じられるかもしれませんが、大切な財産を守るために基本的な知識はぜひ知っておきたいものです。
不動産の「権利」の基礎知識
不動産には、目に見える建物や土地そのものだけでなく、「権利」というものが存在します。
例えば、「所有権」は土地や建物を自由に使ったり、売ったり貸したりできる最も強い権利ですね。
他にも、他人の土地に建物を建てるための「地上権」や、土地を借りて利用する「賃借権」など、様々な種類の権利があります。
これらの権利は、法務局に備え付けられた登記簿(現在は磁気ディスクで管理されています)に記録され、誰でもその内容を確認できるようになっています。
これは、不動産取引の安全と円滑をはかるために非常に重要な役割を果たしています。
登記簿は大きく分けて「表題部」と「権利部」があり、表題部には物理的な状況(広さや構造など)が、権利部には権利に関する情報(所有者が誰か、抵当権が付いているかなど)が記録されています。
なぜマンションでは土地の権利が複雑になるのか
一戸建ての家の場合、通常、建物と土地の所有者が同じで、権利関係は比較的シンプルです。
ところが、マンションのような「区分所有建物」では、一つの建物をたくさんの人がそれぞれ所有しています。
日本の法律では、土地と建物は別々の不動産として扱われます。
このため、もしマンションの土地の権利と、各部屋の所有権がバラバラになってしまうと、非常に複雑な問題が発生する可能性があります。
例えば、建物の所有者は部屋を持っているのに土地を使えない、土地の権利者が勝手に土地を売ってしまう、最悪の場合、土地の権利者から建物を撤去するよう求められるといったトラブルも考えられます。
地上権敷地権の役割とメリット
このような複雑さを解消し、区分所有者が安心して暮らせるようにするための仕組みの一つが「地上権敷地権」です。
これは、マンションの部屋(専有部分)の所有権と、その部屋を使うために必要な土地の権利(地上権)を、登記簿上で一体として扱うようにしたものです。
「地上権を敷地権化する」というのは、まさにこの一体化して登記することを指します。
一体化されることで、部屋を売買したり担保に入れたりする際には、土地の地上権も必ず一緒に扱われることになります。
建物と土地の権利が分離して勝手に処分されることが防がれるため、権利関係が明確になり、取引の安全性が高まるという大きなメリットがあります。
マンションが建っている土地が、もともと土地を借りて地上権を設定して建てられた場合などに、この地上権が敷地権として登記されることがあるのです。
宅地建物取引士がチェックするポイント
私たち宅地建物取引士がマンションの取引を行う際には、必ずそのマンションの「敷地権」に関する情報を詳細にチェックします。
特に確認するのは、マンションの登記簿謄本の「敷地権の目的たる土地の表示」という項目と「敷地権の表示」という項目です。
登記簿の項目 | 確認できる内容 |
---|---|
敷地権の目的たる土地の表示 | マンションが建つ土地の所在地、地番、地積(広さ) |
敷地権の表示 | 敷地権の種類(所有権、地上権など)、敷地権の割合 |
ここで「敷地権の種類」が「地上権」となっている場合が、まさに地上権敷地権のあるマンションということになります。
この情報を見れば、皆さんが購入する部屋の所有権に、その土地の地上権が一体となって付随していることが確認できます。
敷地権としてきちんと登記されているか、どのような種類の権利が敷地権となっているかは、購入される方の権利に直結する非常に重要なポイントです。
もし「敷地権になっていない(非敷地権)」場合、土地と建物の登記が別々になるなど、手続きがより複雑になることもあるため、特に慎重な確認が必要です。
ご自身で登記簿を確認するのは難しく感じられるかもしれません。
不明な点があれば、遠慮なく私たち専門家にご質問ください。
安心して不動産取引を進めていただくために、私たちは全力でサポートいたします。
地上権と敷地権、それぞれの意味を理解する
地上権と敷地権。
耳にしたことはありますか。
不動産、特にマンションの売買や所有においては、これらの権利を理解しておくことがとても大切です。
まずは、それぞれがどのような権利なのかを見ていきましょう。
土地を使用する「地上権」
地上権とは、他人の土地の上に、建物や工作物、竹木を所有するために、その土地を使用することができる権利です。
民法で定められている物権の一つで、非常に強い効力を持っています。
例えば、マンションを建てるために、土地の所有者ではない方がその土地を借り、そこに建物を建てる場合などに設定されることがあります。
この場合、土地の所有者に対して地代を支払う場合もあれば、無償で設定される場合もあります。
地上権が設定されると、地上権者は土地所有者の同意がなくても、地上権を他人に譲渡したり、その土地を第三者に貸したりすることができます。
これは、借地権の一つである賃借権とは異なる大きな特徴です。
地上権の設定は不動産登記簿の権利部の乙区という部分に登記されます。
これにより、地上権があることを誰にでも主張できるようになります。
第三者に対する対抗力が得られるのです。
建物と一体となった「敷地権」
敷地権とは、マンションのように区分所有建物となっている建物の専有部分を所有している方が、その建物の敷地を利用できる権利で、登記によって専有部分と一体化されたものを指します。
日本の法律では、土地と建物は別々の不動産として扱われます。
このため、一つの建物を多くの人が所有する区分所有建物では、建物(専有部分)と土地の権利が別々になると、権利関係が非常に複雑になることがあります。
そこで、昭和58年の区分所有法改正により、専有部分の所有権と敷地利用権を原則として一体として扱う敷地権という仕組みが導入されました。
敷地利用権には、土地の所有権を共有で持つ場合や、地上権、賃借権などがあります。
これらの権利が区分所有建物の専有部分と一体化して登記されることで、敷地権となります。
敷地権として登記されると、専有部分と敷地権をバラバラに売ったり、担保権を設定したりすることが原則としてできなくなります。
まさに、その通りなんですよ。
これは、建物だけを持っていても土地が使えなかったり、土地の権利だけが売られてしまったりといったトラブルを防ぎ、不動産取引の安全と円滑を図るためにとても重要なルールです。
例えば、みなさんが敷地権付きマンションの部屋を売却する場合、敷地権である土地の権利も必ず一緒に新しい所有者へ移転するのです。
敷地権として「登記」されること
地上権などが敷地権として扱われるためには、不動産登記簿にその旨が登記されていることが必須です。
登記によって、誰に対しても自分がその不動産に関する権利を持っていることを証明できるようになるからです。
マンションなどの区分所有建物の場合、敷地権に関する情報は、建物の登記簿謄本に登記されます。
具体的には、建物の登記記録の表題部というところに「敷地権の目的たる土地の表示」や「敷地権の表示」といった欄が設けられています。
ここには、敷地権となっている土地の所在地や地番、そして「敷地権の種類:地上権」「敷地権の割合:例えば10000分の150」といった具体的な内容が記載されています。
敷地権になっている場合、原則として土地の登記簿には建物に関する権利の登記がされず、建物の登記記録を見るだけで土地の権利(敷地権)についても把握できるようになります。
これは、土地と建物の権利が一体化し、公示されることで、よりシンプルで分かりやすい不動産取引が可能となるためです。
このように、敷地権として登記されることで、建物の専有部分と土地の権利が一体化していることが公に示されます。
私たち宅地建物取引士は、この登記情報をお客様にお伝えすることで、安心して不動産取引を進めていただけるように努めています。
ご自身の権利を守るためにも、建物登記簿謄本の敷地権の表示を確認したり、不明な点は専門家にご相談いただいたりすることが大切です。
なぜ地上権は敷地権になる必要があるのか

地上権がマンションなどの敷地権となることには、日本の不動産制度と区分所有建物特有の事情が関係しています。
土地と建物は別々の存在
日本の法律では、土地と建物はそれぞれが独立した別の不動産として扱われます。
これは世界の主要な国々から見ると特徴的な制度といえるでしょう。
たとえば、土地の上に家を建てても、土地の所有者と建物の所有者が別人になることがあります。
権利を分離させないための仕組み
土地と建物が別個の不動産として扱われるため、マンションのような多くの人が一つの建物を共有する「区分所有建物」では、部屋(専有部分)の所有権と、その建物の敷地を利用する権利がバラバラになってしまう可能性があります。
もし権利が分離してしまうと、マンションの部屋の所有者が土地を使えなくなり、最悪の場合、土地の権利者から建物の撤去を求められるといった複雑な問題が生じかねません。
こうした事態を防ぎ、安心してマンションに住めるようにするため、建物と土地の権利を分離させないための仕組みが必要になりました。
区分所有法で定められたルール
建物と土地の権利を一体化させる仕組みは、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」によって定められています。
この法律では、マンションの部屋(専有部分)の所有権と、その敷地を使う権利である「敷地利用権」を原則として分離して処分できないものとして一体的に扱うルールが導入されました。
敷地利用権には、土地の所有権のほか、地上権や賃借権といった権利が含まれます。
マンションの敷地が借りた土地であり、地上権が設定されている場合、この地上権が区分所有法に基づき、敷地利用権として建物の専有部分と一体化されます。
そして、この一体化された敷地利用権が不動産登記法によって敷地権として建物の登記簿に登記されます。
敷地利用権になれる主な権利
権利名 | 内容 |
---|---|
所有権 | 土地そのものを自由に使える権利 |
地上権 | 他人の土地に建物を建てるために土地を使える権利 |
賃借権 | 他人の土地を借りて使う権利 |
円滑な不動産取引のために重要
地上権が敷地権としてマンションの専有部分と一体化されることは、不動産取引の安全と円滑にとって非常に重要です。
敷地権として登記されている場合、マンションの部屋を売買したり、担保に入れたりする際には、必ず敷地に関する地上権(敷地権)も一緒に扱われます。
部屋だけを売却し、土地の地上権は手元に残す、といった権利の分離が原則としてできなくなるのです。
これにより、購入者は部屋と土地の権利をセットで取得できることが明確になり、安心して取引できます。
もし敷地権になっていない「非敷地権」の場合、土地と建物それぞれの権利関係を確認し、別々に登記手続きを行う必要が生じるなど、手続きが煩雑になりトラブルの原因になる可能性も否定できません。
宅地建物取引士として、こうした点を確認し、お客様に分かりやすく説明することも大切な業務です。
地上権敷地権と混同しやすい土地の権利

地上権敷地権についてご理解いただけたでしょうか。
不動産の権利には、これと似て非なるものがいくつかあります。
この見出しでは、地上権敷地権と混同しやすい他の土地の権利との違いを見ていきましょう。
この比較を通じて、地上権敷地権の特徴がより明確になるはずです。
地上権と借地権の違い
地上権も借地権も、どちらも「他人の土地を使って建物を建てるなどの目的で利用できる権利」という点では同じように見えますが、法的な性質に大きな違いがあります。
地上権は「物権」といって、土地そのものを直接利用できる強力な権利です。
地上権を設定すれば、土地の所有者が変わっても新しい所有者に対して権利を主張できます。
これを第三者対抗力といいます。
一方、借地権(主に土地の賃借権を指します)は「債権」です。
これは土地所有者との間の契約に基づく権利なので、原則として契約した相手にしか主張できません。
ただし、借地借家法により、土地の上に建物を建てて登記することで、借地権も第三者に対抗できるようになります。
しかし、権利の性質や設定方法などには違いがあります。
項目 | 地上権 | 借地権(賃借権) |
---|---|---|
権利の性質 | 物権 | 債権 |
権利設定 | 土地の所有者と地上権設定者との設定行為(登記で効力発生) | 土地の所有者と賃借人との賃貸借契約(契約で効力発生) |
第三者への対抗力 | 地上権設定登記 | 建物登記(または賃借権登記) |
賃料(地代) | 設定行為で定める(無償も可能) | 通常は支払いが必要 |
登記簿への記載 | 土地登記簿の権利部(乙区) | 土地登記簿の権利部(乙区)または建物登記簿(借地上の建物の場合) |
これらの違いは、土地の利用や売買、特に地上権付きマンションの敷地権を理解する上で大切な視点となります。
地上権と土地所有権の違い
土地所有権は誰もが知っている土地の権利ですが、地上権は土地の所有権とは全く異なるものです。
土地所有権は、文字通り土地全体を自分のものとして、使うこと、収益を得ること、そして自由に売却するなどの「処分」を全て行える最も強力な権利です。
これに対して地上権は、「建物や工作物を所有するため」という目的に限定して、他人の土地を使う権利です。
土地の売却や全面的開発など、所有権者が行える多くの行為は地上権者には許されていません。
地上権者は、あくまで設定された範囲や目的で土地を利用できるに過ぎません。
項目 | 土地所有権 | 地上権 |
---|---|---|
権利の内容 | 使用、収益、処分すべて自由 | 建物・工作物所有目的で土地を使用・収益 |
権利の対象 | 土地全体 | 設定された範囲(通常は土地の一定範囲) |
権利の性質 | 物権(最も広範) | 物権(目的限定) |
存続期間 | なし(永続的) | 設定契約で定める(借地借家法で最低期間あり) |
土地の所有権を持たずに土地を使える地上権という権利があることを理解すれば、地上権付きのマンションがどのように成立しているかが分かりやすくなります。
「非敷地権」の場合とは
マンションのような区分建物では、通常、専有部分の所有権と敷地利用権が一体となった「敷地権」として登記されていますが、そうでない場合も存在します。
これが「非敷地権」の場合です。
非敷地権とは、区分建物の敷地に関する権利(敷地利用権)が、建物の専有部分の所有権と一体化されて敷地権として登記されていない状態を指します。
このような状態は、例えば古いマンションで敷地権化の登記がされていないケースや、規約で敷地利用権と専有部分の分離処分が許されているケースなどに起こり得ます。
非敷地権の場合、建物と土地の権利の登記が別々になっているため、「建物だけを売る」「土地の権利だけを売る」といった分離処分が可能になってしまい、「誰がどの土地に対してどのような権利を持っているのか」という権利関係が複雑になりやすいのです。
項目 | 敷地権付き区分建物 | 非敷地権の区分建物 |
---|---|---|
登記の状態 | 建物登記簿に敷地権として一体登記 | 建物と土地の権利の登記が別々 |
取引(売買・担保) | 建物と敷地の権利が一体 | 建物と敷地の権利を分離して処分可能(原則) |
権利関係の明確さ | 高い(建物登記を見れば分かる) | 低い(建物と土地の両方の登記を見る必要あり) |
トラブルリスク | 低い(分離処分できないため) | 高い(分離処分による権利関係複雑化のリスク) |
非敷地権のマンションを購入する場合は、敷地の権利関係を慎重に調査する必要があります。
私たち宅地建物取引士は、このようなケースでは、特に登記簿を念入りに確認しますよ。
マンションの地上権敷地権を確認する方法と注意点

マンションを購入したり所有したりする際、建物だけでなく土地の権利関係、特に地上権敷地権がどうなっているかを確認することは非常に大切です。
登記簿謄本で確認できること
不動産の正確な情報や権利関係を知るには、まず登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して確認します。
法務局で取得できるこの書類には、対象となる不動産の物理的な状況や所有者、所有権以外の権利といった重要な事項が記録されています。
マンションのような区分所有建物の場合、登記簿謄本は建物全体のものと、それぞれの部屋(専有部分)のものの2種類があります。
敷地権に関する情報は、専有部分の登記簿謄本にある「敷地権の目的たる土地の表示」と「敷地権の表示」の項目で確認が可能です。
これにより、その建物がどの土地の上に建っているのか、そしてその土地に対する所有者の権利(敷地権)がどのようなものかを確認できます。
区分 | 記載される情報 | 確認できること |
---|---|---|
表題部 | 建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積など | マンションの基本的な物理情報 |
権利部(甲区) | 所有者の氏名、住所、所有権を取得した原因(売買、相続など)、差押え | 専有部分の現在の所有者や所有権に関する変動や制限 |
権利部(乙区) | 抵当権、賃借権など所有権以外の権利に関する事項 | ローンの担保(抵当権)など土地以外の権利設定状況 |
敷地権の表示 | 敷地権の種類、敷地権の割合 | 土地に関する敷地権の種類と専有部分に応じた持分割合 |
土地の登記簿謄本も併せて確認することで、より詳細な土地の情報や過去の権利変動なども把握できます。
不動産取引の安全のために、必ず確認するようにしてください。
「敷地権の種類」の見方
登記簿謄本で「敷地権の表示」欄を見ると、「敷地権の種類」という項目があります。
ここには、そのマンションの敷地がどのような権利形態に基づいているかが記載されており、主に所有権、地上権、賃借権の3つのいずれかが記されています。
これらの権利は、土地を利用する権利である「敷地利用権」が、建物の専有部分と一体化して登記された「敷地権」となった場合の具体的な内容を示しています。
例えば、土地を借りてマンションを建てている場合、その土地の「地上権」や「賃借権」が敷地権として登記されています。
敷地権の種類が何かによって、権利関係や取引上の手続きに多少の違いが出てくることがあります。
敷地権の種類 | 概要 | マンションの場合 |
---|---|---|
所有権 | 土地を完全に支配し、使用・収益・処分できる権利 | マンションの区分所有者が土地の共有持分を持つ場合の敷地権として最も一般的 |
地上権 | 他人の土地の上に工作物(建物など)を所有するため、その土地を使用できる権利 | 土地を借りてマンションを建てる場合に設定され、その地上権が敷地権となる |
賃借権 | 賃料を支払って他人の土地を借りて使用できる権利(多くは土地を借りて建物を建てる目的) | 土地を借りてマンションを建てる場合に設定され、その賃借権が敷地権となる |
ご自身の権利を守るためにも、「敷地権の種類」を正しく理解することは非常に重要です。
特に地上権や賃借権が敷地権となっている場合は、所有権の場合と異なる留意点があるケースも考えられます。
購入時の注意点
マンションに設定されている地上権敷地権を確認する際は、いくつかの注意点があります。
まず、登記簿謄本で「敷地権の表示」がされているかどうかを確認します。
敷地権として登記されている場合、その専有部分(お部屋)と土地に関する権利(敷地権)は一体として扱われ、分離して売買したり担保に入れたりすることは原則としてできません。
これにより、権利関係が明確になり、取引の安全が守られています。
しかし、過去に建築された建物の一部や、規約で例外が定められているなど、敷地権として登記されていない「非敷地権」のマンションも存在します。
非敷地権の場合、土地と建物が別々に登記されているため、売買や相続、担保設定などの手続きがより複雑になることがあります。
例えば、建物は売れたけれど土地の権利が別の人に残ってしまい、後々トラブルになるリスクも考えられます。
また、登記簿上の敷地権の割合と、規約に定められた敷地利用権の割合や管理費・修繕積立金の算定根拠となる割合が異なっているケースがないかも確認が必要です。
割合が不一致だと、将来的に負担割合や権利行使で問題が生じるかもしれません。
信頼できる「口癖」というわけではありませんが、こうした細部まで目を配ることが大切です。
専門家に相談することの重要性
地上権敷地権を含む土地の権利関係や登記簿の確認は、専門知識が必要な場合が多いものです。
私たち宅地建物取引士は、日頃からこうした不動産に関する複雑な権利関係や登記について専門的に扱っています。
皆さんが登記簿謄本を見ても、記載されている用語の意味が分からなかったり、記載内容からどのようなリスクが考えられるかを判断するのが難しかったりすることがありますよね。
それは決して珍しいことではありません。
専門家に相談いただければ、登記簿謄本に記載された地上権敷地権の内容を正確に読み解き、その権利が具体的に何を意味するのか、そして購入を検討している物件についてどのような注意点があるのかを分かりやすく説明できます。
例えば、敷地権の種類が所有権、地上権、賃借権のいずれであるかによって、注意すべきポイントや確認すべき事項が異なります。
そういった具体的なアドバイスや、非敷地権の場合のリスク、そして安心して取引を進めるための手続きについてサポートが可能です。
専門家(宅地建物取引士など)に相談するメリット |
---|
登記簿謄本など専門的な書類の正確な読み解き |
物件の土地の権利関係(地上権敷地権の有無、種類、割合など)の詳細な確認 |
敷地権に関する潜在的なリスクや注意点の説明 |
非敷地権の場合の複雑な手続きに関するサポート |
不安や疑問点の解消、安心して購入や売却を進めるためのアドバイス |
ご自身の権利に関わる大切な部分ですから、少しでも不安を感じたり、内容が分かりにくいと感じたりした場合は、迷わず専門家に相談することが大切です。
専門家と共に、安心して不動産取引を進めていただきたいと思います。
よくある質問(FAQ)

地上権と借地権(賃借権)は、何が違うのですか?
はい、どちらも他人の土地を利用する権利ですが、法的な性質が異なります。
地上権は「物権」といって、土地を直接支配する強い権利です。
一方、借地権(賃借権)は「債権」で、土地の所有者との契約に基づく権利になります。
地上権は設定登記をすれば第三者にも権利を主張できますし、賃料についても契約で自由に定められることが多いですよ。
借地権は建物登記などで第三者対抗力が得られますが、基本的な性質が違うのですね。
マンションの敷地権には、どのような種類がありますか?
主に3つの種類があります。
一番多いのは、マンションの区分所有者様全員で土地の所有権を共有している「所有権」が敷地権となるケースです。
その他に、土地を借りてマンションを建てた場合に、その土地の「地上権」や「賃借権」が敷地権となることがあります。
これらは全て、建物の専有部分と一体化して登記されています。
地上権と土地の所有権は、どう違うのですか?
土地の所有権は、その土地全体を自由に使用、収益、処分できる最も強い権利です。
これに対して地上権は、「建物や工作物を所有するため」という特定の目的で、他人の土地を使用できる権利なのですね。
所有権者ができる土地の売却や開発など、多くの行為は地上権者には許されていません。
地上権者はあくまで設定された範囲や目的内で土地を利用できる権利を持っています。
地上権付きマンションの場合、土地の権利は全くないということですか?
いいえ、全くないわけではありません。
地上権付きマンションでは、土地の「地上権」という利用権が敷地権として、お部屋(専有部分)の所有権と一体になっています。
これは、区分所有建物において、お部屋を所有することでその建物に必要な土地の地上権という形で土地を利用する権利もセットで持っていることを意味します。
専有部分と土地の権利が分離してしまわないための、大切な仕組みなのです。
敷地権になることには、どんなメリットがありますか?
敷地権になる最大のメリットは、不動産取引の安全性が非常に高まることです。
お部屋(専有部分)の所有権と、敷地に関する土地の権利(所有権、地上権、賃借権など)が一体化して登記されるため、これらをバラバラに売買したり担保に入れたりすることが原則としてできなくなるのですよ。
これにより、土地の権利だけが知らない間に別の方に移ってしまうといったトラブルを防ぎ、購入される方が安心してマンションの権利を取得できます。
マンションの敷地権の割合は、どのように決まるのですか?
敷地権の割合は、原則として、お客様が所有される専有部分(お部屋)の床面積の割合によって決まります。
これは、マンション全体の専有部分の床面積の合計に対する、ご自身の部屋の床面積の割合となるのが一般的です。
ただし、建物の区分所有者様の間で決められた「規約」によって、これとは異なる割合が定められている場合もあります。
詳しい内容は、登記簿謄本の「敷地権の表示」欄で確認できます。
まとめ

本記事では、マンションなど区分所有建物の土地の権利である地上権敷地権について、その定義から役割、確認方法までをわかりやすく解説しました。
特に、地上権を建物の専有部分の所有権と一体化して敷地権として登記することの意味と、それが不動産取引の安全にとってなぜ重要なのかをご説明いたしました。
- 地上権敷地権は、マンションなどの建物と土地の権利を一体化させたもの
- 一体化により、土地と建物の権利がバラバラになるのを防ぎ、権利関係が明確になる
- 敷地権は登記簿で確認でき、購入時にはその種類や状態に注意が必要
- 他の土地の権利(所有権、借地権)とは違いがある
地上権敷地権は不動産取引、特にマンション購入において大切な権利関係です。
ご自身の権利を守るため、登記簿の確認や、不明な点の専門家へのご相談をぜひ検討してみましょう。